「お布施って、いつ渡せばいいんですか?」
——そんな質問をよくいただきます。僧侶は尊敬される存在。失礼があってはいけないと、緊張するのは当然です。でも、実はその不安、仏教の教えを知ることでスッと消えていきます。
曹洞宗の開祖・道元禅師の教えを弟子懐弉様がまとめた『正法眼蔵随聞記』には、こんな言葉があります。
「是の故実は、我レに供養ずるにあらず、三宝に供ずるなり」
訳すと、「このお布施は僧侶個人に供養するものではなく、仏・法・僧の三宝に供養するものです」という意味です。つまり、お布施は“感謝の気持ち”を仏様に届ける行為。僧侶はその“取次役”なのです。
だからこそ、渡すときの心構えはこうです。
✅「本尊様にお供えください」という気持ちで渡す ✅「ありがとうございます」ではなく「謹んでお供えいたします」と伝える
では、実際のタイミングは?
✅おすすめは「法要や葬儀の30分前」。僧侶が到着して着替える前にご挨拶するタイミングです。落ち着いて渡せるので、忘れる心配もありません。
✅法要なら「終了後にお茶を出すタイミング」も自然です。場の流れに乗って渡せるので、気まずさもありません。
✅葬儀後は慌ただしくなるので、前もって渡す方が安心です。
ただし、地域によって風習が違うこともあります。そんなときは——
✅「檀家総代やお寺の役員」に聞いてみましょう。ネットよりも、地元の知恵袋の方が確実です。
✅「自分が一番心を込めて渡せるタイミング」を選ぶのが正解です。
お布施は“仏縁”を結ぶ大切な行為。だからこそ、渡すタイミングも「心が整う瞬間」がベストなのです。
※参考文献『正法眼蔵随聞記』
著者:懐弉 訳:水野弥穂子
発行所:株式会社筑摩文庫