「ドウアンって何?」——
この言葉を初めて聞いた方の多くが、そう思われるかもしれません。でも、もしあなたが曹洞宗のお寺で読経の場面に立ち会ったなら、きっとその存在の大切さに気づくはずです。
堂行(どうあん)とは、読経の進行を担う修行僧のこと。鐘や木魚を鳴らしながら、場の流れを整え、導師や僧侶たちの動きを支える、まさに“読経の指揮者”です。
使う仏具も特徴的です。右手には丸い木魚、左手には大きな鐘「大鏧(だいけい)」、そして中央には小さな鐘「小鏧(しょうけい)」。これらを自在に操るには、両手の器用さと集中力が求められます。まるで仏具のドラム演奏。もしかすると「堂行、どうあん、ドウアン…ドラム」と語感がつながったのかもしれませんね。
私が修行していた福井県の大本山永平寺では、堂行は修行歴4年以上の僧侶が務める重要な役割でした。読経の進行だけでなく、修行僧の指導者としての責任も担います。朝の掃除場所の指示、怠けている僧侶への注意、伝達事項の共有——まさに修行の現場を仕切る存在です。
だからこそ、堂行は憧れの的。徳が備わっていなければ務まらない、信頼と尊敬を集める役割なのです。
ここで、ひとつ提案です。お寺に参拝する目的は、供養や祈願だけではありません。読経の場面で堂行の動きに注目してみてください。修行僧の真剣な姿、仏具の音が織りなす空間、そのすべてが仏教の奥深さを教えてくれます。
そして、もし機会があれば、永平寺にもぜひ足を運んでみてください。修行の空気を肌で感じ、堂行の姿に触れることで、きっと何か心に響くものがあるはずです。