愚痴に困ったら、こう返す。
「否定しない。肯定しない。でも、場を和ませる。」
棚経先で、檀信徒さんから住職の愚痴を聞かされることがあります。そんなとき、正面から受け止めると角が立つ。否定しても、同調しても、どちらも気まずい。
そこで私が使う魔法のフレーズは——
「へぇ、それだけ住職さんのことをよく見ていらっしゃるんですね。皆さんから慕われている証拠ですね。」
この一言で、空気がふっと和らぎます。そして「次の方がお待ちですので」と自然に場を離れる。
言葉は、空気を変えるスイッチ。 伝え方ひとつで、関係性も場の雰囲気も、やさしく整います。
「お布施はいくらですか?」に、どう答える?
“お気持ち”の中にある、地域の信頼。
この質問、意外とよく聞かれます。でも、お布施に明朗会計はありません。だからこそ、伝え方が大切です。
「お気持ちで、というのが基本ですが、迷われたら菩提寺の住職さんや、同じお寺の檀信徒さんに相談されると安心かもしれませんね。」
あるラジオ番組では「お盆のお布施は、お坊さんへのお年玉みたいなもの」と話していた方がいました。 決まっているようで、決まっていない。 そんな“ゆるやかな決まり”が、人の心を映しているのかもしれません。
棚経は、信頼のリレー。
お坊さんが町を歩く——それだけで、誰かの心が動く。
お墓参りに行こうかな。 久しぶりに故郷に帰ろうかな。 家族に会いたいな。
そんな気持ちが芽生えるなら、棚経はただの行事ではなく、心をつなぐ伝統になります。